演 目
アンダンテ・カンタービレ
観劇日時/06.9.24
第2回清田区演劇のつどい
作・演出・音楽/斎藤歩
その他詳細は不明
劇場/清田区民センター

少し進化したリアリティ

 初演を観たとき、地方で悪戦苦闘する文化活動の実態がユーモアを基調によく現されているなと思った。ここに集う人たちの人間模様が巧く描かれていて、ほのぼのとした感じだった。逆にいえばそれだけのスケッチでしかないとも言えるのだが……
そのとき思ったのは、この人たちの苦労の中で最も大事な2点が描かれていないということであった。
その一つは金の問題。こういうことには必ず費用の問題がついて回る。そしてそれがとても大きな問題なのだ。そのためにやりたいこともやれないということが起こってくる。その視点がなかったことだ。
もうひとつは年齢の制約。この種の集団の参加者はある年齢になると必ず仕事や家庭の事情で活動が出来なくなる人が出てくる。そこのところがやっぱり書き込み不足ではないのか? そのことは初演時の感想に詳しく書いてある。
今度の舞台では年齢の問題はやっぱりそのままだったが、金の件についてはピアノをどうするか? という問題で少し触れていた。
もっともたくさんの問題をいろいろ舌足らずに並べるよりも、絞って描いた方が良いのかも知れない。問題を提起する芝居じゃないのかもしれないのだ……
出演は俗物の僧侶で団長の永利靖、合唱より保険の勧誘に忙しい原子千穂子、出戻りの吉田直子、この三人は40歳でこの秋の文化祭での公演を最後に、この合唱団を卒業することになっている。
教育委員会の役人らしくない役人の高田則央、祖父が町内唯一の銅像になっている元町長の孫である町職員の木村洋次、牧場の娘で福祉士の山本菜穂、その弟で高校卒業後無職で牧場の手伝いをしている川崎勇人。
そして札幌の高校教師で誤解から退校してこの町の高校へと転校し、合唱団の指導をしている女教師の宮田圭子、彼女は芸術至上主義で軋轢を起こす。以上8人の登場人物……
この女教師を巡る物語が、深刻でありリアリティがあり、話の芯となって全体に深みを創っている。