演 目
東京OZ月光
観劇日時/06.6.8
劇団名/アンド
脚本・演出/亀井健 
照明/上村範康 
ヘアメイク/佐々木恭代・中村和美
楽曲提供/なみんじ 
製作・著作/AND
劇場/コンカリーニョ

ナルシズムの世界

 北海道新聞の9月19日付夕刊「ステージ」欄には、『交錯する二つの物語 観客を刺激』というキャプションで詳細にこの舞台が紹介されている。それによると「観客に優しくない、実に『やっかい』な芝居である。だが不思議なことにそれから全体の枠組みが徐々に見え始め、個々のキャラクターが際立ってくる。」と書かれている。
確かに好意的に見ればその通りであろう。だが果たしてそんな風に観られるであろうか? 僕には到底そんな感じはしなかった。
自己満足の観念のお化けであり、具体的な話の内容はさっぱり意味不明だ。なかなか個々のキャラクターは立ち上がってはこない。中盤になって、一種のユートピア志向と挫折の物語と感じられるがそれにしてもまどろっこしい。
トップシーンには厳しく孤独の中にひっそりと感じさせる暖かさや雰囲気が、ふと唐十郎の味を彷彿とさせたが、それも一瞬だった。
物語といい表現方法といいユニークで野心的なのだが、残念ながら自己満足の空間に閉じ籠った空滑りの舞台であった。
自己満足もナルシシズムも自己表現の大事な一つの要素ではあるが、それが自己完結してしまうと表現としては意味不明になってしまう。