演 目
恋愛戯曲
観劇日時/06.6.25
劇団・公演/KOKAMI@netwark vol 8 深川市・深川市教育委員会
作・演出/鴻上尚史
美術/松井るみ
照明/坂本明浩
音楽/HIROSI WATANABE
音響/堀江潤
衣装/原まさみ
舞台監督/藤崎遊・藤原秀明
劇場/深川市文化交流ホール 「み・らい」

華やかなサロン劇

 まずストーリイを当日パンフから紹介しよう。
「(要約)人気脚本家・谷山真由美(=牧瀬里穂)が苦吟している。心配して尋ねてきたテレビ局の若手プロデューサー向井正也(=渡部建)に谷山は、自分と恋愛してくれたら台本が書けると迫る。
 谷山のマネージャー(=安原義人)にまで頼まれて、谷山のペースに巻き込まれ、書き始めた台本は、彼女と向井をモデルにした淋しい人妻と若手プロデューサーとの恋愛ドラマだった。
 そこへ突然ライフル銃を持った二人組の杉村仁(=斉藤慶太)と泉川京子(=大和田美帆)の男女。彼らは郵便局を襲い、追われてこの谷山の篭る山荘に逃げ込んできたのだ。
 谷山が有名な脚本家であることを知った杉村は、俺たちのことを書け! と言い出す。果たして、谷山の台本は完成するのか……。」
 とあり、さらに解説では淋しい人妻が書いた台本は売れっ子脚本家とプロデューサーが登場するという3つの入れ子状態の芝居になっているという。
 書けなくなったTV脚本家とプロデユーサーと逃げ込んだ強盗という設定が、松本直俊・原作、倉本聰・脚色の『タイム・リミット』に酷似している。そこにどういう意味があるのかは分からないが、この偶然の大枠に何かの因縁を感じる。
 実際に観ていると、暗転が激しく、1の状況(書けない人気脚本家とプロデユーサー)。2の状況(彼女の書く淋しい人妻と彼女に脚本の執筆を奨める若手プロデユーサーの話)。3の状況(その人妻が書く脚本に登場する人気脚本家と新米プロデユーサーの話)が目まぐるしく入れ変わるので混乱する。特に1と3とは区別がつかず、3は1の未来形として見えたのだ。で、結局この話、一体何を表現したかったのか?
 「恋の始まりに理由はない。だけど恋の終りには理由がある。脚本家が選ぶのは、仕事か、家庭か、個人か。」とも惹句に書いてある。つまり仕事・家庭・個人の三つを、恋愛を媒体にして考えてみようという一種のサロン劇風の舞台なのであろうか?
 牧瀬里穂・渡部建という人気タレントを起用したこの舞台は3千円という破格な入場料とあって、市内はもちろん近隣町や遠くは札幌・旭川それに神奈川からの追っかけまでもあったりして、このホールには珍しく立ち見の出る超満員だった。
 鴻上戯曲としては物足りないが、その知名度と華やかな出演者たち、造りこまれた舞台装置などの力で、田舎の演劇フアンの底上げにはなったのであろうか?
 牧瀬里穂のシャープで切れ味の良い、メリハリの利いた役者振りが印象に残った。