演 目
住 宅
観劇日時/06.6.20
劇団名/滝川西高校演劇部
公演回数/06年度 第1回自主公演
作・演出/五十川志織
照明/大谷朋香
音響/形幅久美子
劇場/滝川ホール

シュールな人情喜劇

 世話好きで面倒見の良かった亭主・寅の死後、残されたボロアパートを守る大家(=上机美穂)。借金まみれで働かないその娘・なつ(=田島あやこ)。厄介払いをされてこのアパートに押し込められた不登校女子中学生・ひかる(=五十川志織)。サッカー留学の越境中学生・ケンジ(=深谷里美)。怪しげな夜の仕事のキヨ(=佐藤芽衣)。
 さすがに大人の世界の人情喜劇は、高校生にとって荷が重いのか途中テンポが緩む場面を散見する。
そこへ「なつ」の名義になっているこの建物の権利を持つ整理屋の親父(=岡本彩香)の指示のもと、その娘・幸(=藤内志帆)が値踏みにくる。
 かなり複雑で、大人の世界と子どもの世界が入り混じって展開する。しかし話がときおりシュールに展開するので思わず引き込まれる。例えば避難訓練をやっているうちに、空襲警報のときの避難訓練の仕方を練習するとか、全編にそういうテイストが含まれている。
 取立屋の幸が、不登校中学生への思い入れを込めて彼女の心中を吐き出させるシーンで、この中学生が歌う歌のメロディの微妙な崩れ方と、不安定なビブラートがシュールであると同時に彼女の心境を強く印象付けた。
 『住宅』というタイトルも面白い。この一見そっけない無機質な感じのネーミングは、最初この話に似合わないのではないかと思ったが、この価値観の転換こそこの表現の客観性を表わしていると思われる。
 川西高は着実に力を付けてきている。日常の訓練と発表の回数の多さ、オリジナルの脚本を書こうという意欲、さらに自然体でリアルな演技が出来るようになったことなどが要因であろうか。まだ正面を切った大仰なパターン演技がときどき現れる。そこから脱却してほしい。