演 目
ちびくろさんぼ
観劇日時/06.6.6
劇団名/gah!+極!+WATER!+満天飯店!
原作/ヘレン・バンナーマン
演出/モモセシュンスケ
補欠/テシロギヒロフミ
スタッフ/オトカワチナツ・カナヤマユイ
出演/ククミナトメグミ・サイカワジュンコ
   サイトウマイコ・ナガムツ・ホソキミホ
   シミズトモアキ・ジョウジマイケル
   タキザワオサム・モモセシュンスケ
劇場/レッドベリースタジオ(JR琴似駅徒歩5分の、個人が建設した多目的小ホール)

オリジナルを微妙にずらした面白さ

 原作自体を僕自身も良く知らない。うろ覚えである。それを見越してか、最初にオリジナルを紙芝居で見せるのだが、それが意外と面白い。シンブルな絵と単純な説明なのが却って印象深い。
そして次に、8人の出演者が様々な原作の登場人物を入れ替りに演じるのだが、次々に役柄を取っ替え引っ替えして、原作を忠実に辿りながら微妙にずらして別な物語を紡いでいく。その落差が意外でありながらあり得る話として納得がいく面白い方法だ。めまぐるしくて同時に演劇的で観ていて飽きない。
 芝居の始まりも、狭い会場だから、登場人物たちはこれから始まるであろう舞台の上で日常的な装いで雑談しながら、客席と一緒に寛いで開幕を待っているような雰囲気だ。
最初のシーンは、サンボの両親の元へサンボと名乗る人物が次々と尋ねてくるシーンだ。これが何とも微笑ましく次に尋ねてくる双子の弟たちと共に、一種の家族愛の物語になっていることだ。
次には虎がでる。虎は原始の象徴であり、虎に赤のシャツ、青のズボン、紫の靴、緑の傘を提供するのは、巧言を持って侵入する侵略者を象徴する話とも思える。だから此処では虎は、人間に害を加え人間に敵対する猛獣じゃない。逆に被侵略者の象徴であるわけだ。
そして最後に、双子の兄弟の危機が救われるのだが、兄の許へと戻って来た双子の兄弟も、必ずしも兄と馴染めない。双子は大事な緑色の傘を、記念に兄サンボに残して去っていく。
 この残されたサンボの片割れの一人として、このとき登場した滝沢修は、その時、サンボとして生きた長い人生を滝沢修個人の長い人生に重ね合わせるように、訥々と独白する。
人は究極には一人で生きて行かなければならない切なさと、それでもなお生きていかざるを得ないという哀切溢れるシーンだ。サンボに託した滝沢修の架空個人史のエッセンスのようだった。
 俳優の役柄が次々に変わっていくので、必ずしも役名では呼びかけられない。だから相手を呼ぶ時は俳優の実名で呼んだり、年齢をその俳優の実年齢で答えたり、それが一種のギャグになっていると同時に虚実ない交ぜの変なリアリテイがあって、新鮮な感じがしたのだった。
 またベテラン滝沢修と城島イケルとの掛け合いが、知る人ぞ知る楽屋落ちであって、つい笑ってしまう。
意外と言っては失礼だが、面白い厚みのある舞台であった。