演 目
MONO‐box
観劇日時/06.6.2
junjun+sugapon 2 solo proglan
『瞬きの音』構成・振付・出演/じゅんじゅん
『すがぽん劇場A―』演出/佐藤ひでひろ・すがぽん
作・出演/すがぽん
劇場/コンカリーニョ

楽しむパフォーマンス

 『瞬きの音』
真っ黒の空間に、コーヒーカップとソーサの組み合わせが7組、カップとソーサが少しずつずれながら、まるで宇宙船の時間差分解写真のように半弧を描いて空中に浮かんでいる。
上手やや奥には、一組のコーヒーカップとソーサが卓上に置かれている、やや下手よりの前面にはソーサからほとんど落ちかかったカップが傾いて浮いている。全体に不安定で幻想的な絵面だ。
やがて登場した「じゅんじゅん」は、その傾きかかったカップを取ろうとでもするかのような動作を繰り返す。その動きは普通の人間の動きとはまったく違っている。鍛えられた肉体は、常識では考えられないような一見奇妙な動きを繰り返す。それは限界を超えた人間離れした異常な動きとも言える。
音楽というか効果音というのか、その音響もクラシックをベースにしたと思われる音楽に奇妙な現実離れのした人工音がミックスされた幻想的な音が、ときどき流される。
約30分間、一貫してそのパントマイムとコンテンポラリィダンスとの融合されたようなパフォーマンスを、汗を滴らせながらも呼吸を乱さない力技に魅了され尽くすのだ。
アフタートークで「存在の不確かさ」がモチーフだといっていたが、ある観客の質問に、「自分の意図をその通りに感じて貰うつもりはない」と答えていた。表現者と鑑賞者とは本来そういう関係にあるのが当然で、この観客もバカな質問をしたものだと思った。

『すがぽん劇場A―』
表面上あまり深い意味のないような一齣マンガ風のスケッチが何篇か、これも約30分間に亘って演じられる。意味の深さは判らなくても、洗練された洒落た表現と、これも極限まで鍛え上げられた肉体の魅力で、笑いながら観てしまう。事実客席からはひっきりなしに笑声と拍手が絶えない。
縦横各2bほどの白いパネルを2枚、裏に隠れた介添者が巧妙に左右前後に動かして、その裏に入ったときに一瞬にして変身するという技法を巧く使って楽しませる。
アフタートークで「自己顕示欲が強く、お笑い芸人を目指した」と言う通り確かにその要素が強い。
この二人が所属した『水と油』という集団名の由来が、今日上演された二つの演目の極端な差異に由来するという説明に納得がいく。
この『水と油』は、世界を駆け巡った10年間の活動を一時中止して、それぞれがソロとして見詰め直す、その第1回のジョイント公演だそうだ。
『水と油』の北海道初演に驚愕したその想い出もまだ新たな時期に、彼らの再生に立ち会えたことは幸運であった。同時代を生きる幸せとはこういうことを言うのであろうか。
正直に言えば、あの『水と油』の4人のアンサンブルの衝撃的な舞台が懐かしく、それが惜しまれるのだったが、一方でその潔さにも敬服する。
何時の日か充電された四人のメンバーによる新生『水と油』を、大いに期待したいところだ。