演 目
映 画/かもめ食堂
制作/アートン
観劇日時/06.5.26
制作/不明
原作/群ようこ
脚本・監督/荻上直子
出演/小林聡美・片桐はいり・もたいまさこ
劇場/シアター・キノ

もう日本ではこんな生活はできないのか

 寂しい人生、哀しい人生。だが、ゆっくり流れる時間と豊かな環境は逆に贅沢な人生とも言える。おそらく普通の人々には経験の出来ない3人たちの風景に、強い憧れを持ってこの映画に殺到するのだろう。
シアター・キノのキャパシテーは約70人、一日8回の上映なのに、僕は最初の日、満員で観られなかった。翌日朝に予約して、ようやく観ることができたのだ。
3人のもう若くはない女性たち、彼女たちがはるばるヘルシンキまで行ったのには、おそらく何かの曰くがあるのだろう。具体的には何も語られないが、微かな屈託は充分に感じられる。別にその理由は何でもいいのだ。
ともかく何かを背負った女たちが日本を棄てて異郷の地で偶然に出会い、労わりあって生きる希望を持とうとしたのだ。
もう日本にはそういう場所はないのだろうか? イヤはるばるヘルシンキだからそういう気分になるのであろうか? ともかく老いも若きも、このアンニュイの中から立ち上る、ささやかな春の陽射しを写し出した情景に殺到したのでありました。僕も多分その一人であったのかも……