演 目

観劇日時/06.5.10
劇団名/Teater・ラグ・203
公演回数/Wednesday Theater Vol.16
作・演出/村松幹男
音楽/今井大蛇丸
音響オペレーター/伊東笑美子
照明オペレーター/鈴木亮介
宣伝美術久保田さゆり
劇場/ラグリグラ劇場

連続オムニバスドラマ

 人一人が入れるくらいの大きさを最大とした大小十数個のダンボール箱。ピンク・白・黄色・空色などのパステルカラーが太いブラシでサッサッサッと斜めの線で殴り描きしたように彩られている。左右の白い壁面も同じ様な色彩がパッチワーク状に散らされた舞台。
土井信子(=久保田さゆり)が一人、電話の相手や上司にしきりと謝っている一人芝居。失敗ばかりしている大会社のOLらしい。
この軽薄な色彩と無秩序なダンボール箱の氾濫する事務所は、いかにも上辺だけはきれいきれいで内容の薄い都会の乱立するビル街の風景とも見える。やがて彼女は切れてダンボールを蹴散らし暴れまわって暗転―
土井信子が路上に置かれたテッシュボックスほどの小箱を見詰めている。通りかかった見知らぬ女・早乙女慶子(=田中玲枝)を呼び止めて「この箱は遺体だ」と言い出す。カチコチというセコンド音の幻聴が聞こえて、土井信子は「爆発物だ」と騒ぎ出す。早乙女慶子が安全装置を切って装置を取り出した後に、「一難は避けられた」という手紙が入っていた。手紙を燃すと文面だけが消え、その火に驚いた通行人の神山遊三(=柳川友希)が飛び込んでくる。早乙女と神山は、これも一つの出会いだと喜ぶが、土井はかたくなに人を信じない。
早乙女が土井を招待して、マジシャンである夫の神山を紹介する。大きな3個の箱と共に現れた神山。箱1は空である。箱2は小さな人形芝居の舞台。男女の別れ話を巡ってナンセンスな会話の応酬が延々と続く。箱3には頭と両腕が通る穴が開いた箱があり、それを土井に被せる。
早乙女は母親であり、土井と神山のお見合い風景。胴体が箱になった文字通りの箱入り娘の土井信子。その箱を削ったり色紙を貼ったり男の注文どおりになっていく信子と慶子。神山は、その自分の好みに仕上がった箱だけを愛玩する。すり抜けた信子は、突然壁面から突き出した大きなダンボール箱に逃げ込むと、舞台には冒頭のようにたくさんの色とりどりの箱が湧くように出てきて、その中の一つからマジックショウのように信子が出てくるが、舞台中央に蹲ったまま―
舞台奥の大きな透明の箱に、蹲ったままの信子が見える。神山と慶子がその箱を運び出してくる。この棺桶のような透明箱の中で立ち上がった信子は、様々な日常の行為をスローなテンポでパントマイムを演じる。その脇では、神山が宇宙の時間と人間の一生について延々とお説教のような理屈を述べ立てる。
早乙女慶子が路上に置いてあったテッシュボックスほどの小箱をじっと見詰めている。通りかかった土井信子を呼び止めて「この箱は遺体だ」と話し出す。2景とは土井と早乙女が逆になっている。
つまり箱を巡って繰り広げられる、一種のオムニバスドラマのような構成で面白い着想だが、抽象的な説明が長々と語られ、初日のせいか演技陣の硬さもあって、いささか食傷する。