演 目
コンカリーニョ・レビューショー
観劇日時/06.5.7
コンカリーニョ生誕祭 オープニング
構成・演出/斎藤ちず
音楽/橋本幸
キャステイングプロデューサー/佐藤亜紀子
劇場/コンカリーニョ

ロマンテックなあの頃の演劇たち

 札幌の小劇場の聖地として親しまれた、旧・コンカリーニョが琴似北口再開発事業で取り壊しになり、その跡地に超高層ビル「タワープレイス」が出来ることになり、コンカリーニョを運営していたスタッフは、新たにNPO法人を設立してこの建物の一廓に新生コンカリーニョを建設した。
この3年間、財政面を第一に大変な苦労をしたようで、現在でもそれが全面的に解決したわけではない。むしろこれからまだまだ苦難は続くのだろう。
それにしてはあっけらかんと華やかにそのスタートを飾り、約200席の超満員の観客に混じって、札幌の演劇界のたくさんの顔が見えた。それらの顔は必ずしも単純に祝福しているわけでもなさそうだ。同志として前途を心底から心配しているわけであろう。
さて舞台である。18年前に札幌ロマンチカシアター『魴?舎』として、この初代コンカリーニョを拠点に特設テントなどを舞台にして上演された14本の芝居のさわりを、主に橋本幸・作曲の音楽を中心にアンソロジーとして2時間に亘って綴ったものである。
出演者は当時の役者はもちろん、札幌演劇界のメンバー総数70名が集まった。半分以上は僕の知らない人たちである。もっとも僕は役者の顔と名前を覚えられない性質なので何処かの舞台で観たのだろうとは思うのだが……
昔の芝居は面白かったと単純に言っていいのかどうかは分からないし、懐古趣味はないけれども、最近の舞台の静かさを考えると、この回顧された14本の舞台の何と華やかで賑やかで熱いことよと思われる。
僕は最後の『ちゃっかり八兵衛』しか観ていないので他の13本の話の内容はよく分からない。しかし感じられるのは、物語がロマンチックで波乱万丈で夢と挫折と再生が、超現実的な展開で進められていっているようなのだ。それは客席をも巻き込んで、一緒に幻想の世界を旅するような非日常の体験である。
最近のこじんまりとした日常から抜けきらないような芝居が多い中で、このような壮大な夢を追っていたかつての『魴?舎』の演劇行為に懐古趣味を超えたときめきを感じる。そしてもっと昔の唐十郎の『状況劇場』を想い出させ、札幌にもこんな芝居があったんだと感慨深い。
またこういういかにも芝居らしい華麗な一時を経験したいと思う。最近でもそういう舞台があるにはあるのだが、変に持って回って複雑な形に凝りすぎたような気のするものが多いようだ。
プロローグとエピローグでは、最近上演された一般応募者で創った琴似の開拓史を題材にした『とんでんがえし琴似浪漫』の抜粋が演じられたが、よくある開拓の苦労話ではなく、人間味の濃いコメディらしいのがさすがと思われた。演技も素人としては素直であり、高をくくって、本番を見逃したのが残念であった。