演 目
かたつむりのカギ
観劇日時/06.3.27
劇団名/劇工舎ルート
公演回数/三ヶ月連続公演 pert 3
作/赤玉文太・みん
演出/高田学
舞台美術/田村明美
宣伝美術/ナシノツブテ
照明/伊藤裕幸
音響プラン/山田健之
音響操作/飯田慎治
制作/加藤亜紀 
協力/美容室・SUGATA
松下音次郎(旭川ステージワーク)
劇場/シアターコア(旭川の廃工場を改装した小劇場)

洒落た都会派の会話劇

 出社拒否症の一人暮らしの若い女(=中村ミハル)。発作的に自殺を図るが、そのとき都合よく一人の見知らぬ男(=松下宏)が飛び込んでくる。
女は一種の被害妄想が煮詰まったらしい。男は飄々と対応する。この態度に生来の明るさを取り戻していく女。
なぜ、この男がこのタイミングで突然に現れたのかが巧く説明されていく。ご都合主義といえばその通りだが、納得のいくご都合主義であり不自然ではない。
助言を求める女に、男は自分のことは自分で考えろと言うが、それは決して冷たい言い方ではない。女はすっかり元気を取り戻す。ラストは食べかけの稲荷すしを巡って、ちょっと可笑しく甘酸っぱい稲荷すしのように、懐かしい甘酸っぱいやりとりで暖かい微笑の幕となる。
全体にこの得体の知れない男と、イヤ途中で得体は判るのだが、この飛び込み男と失意女の機智に富んだしかも洒落た会話のみで進行する。ほとんど動きもなく二人の心理が展開していくという構成なので、劇的なものに乏しく二人とも演じ難そうだが、女の愛らしさと男の変形された誠実さに、作り手の清涼な思いが受け取れた。