演 目
僕の心に浮かぶ舟
観劇日時/06.3.26
劇団名/劇団ドラマシアターども
若手ユニット―男子四名様―
作/牧野丈太郎
演出/安浦准太郎
照明/枇本享洋
音響/江上麻友美
演出助手/金子このみ(劇団宴夢)
舞台/石田准也・佐々木宏治
制作/高橋ひろ子・牧野美穂・林十三子(ろうあ劇団舞夢) 小栗七恵(劇団宴夢)
劇場/ドラマシアターどもW

うまく作られたエンターテインメント

 嫌いじゃないのに心のすれ違った若夫婦・桜井隆一(=杉浦啓介)と尚美(=鈴木美穂―劇団宴夢)。夫・隆一の親友で妻に未練のあるらしい男・高見保典(=牧野丈太郎)。高見の紹介で相談に乗る精神科医・坂崎和己(=工藤康記)。
実はその医者は、夫・隆一が陥れられた冤罪の真犯人であったという、ちょっとしたサイコミステリー劇。
この中で活躍する愛猫・アルフォンス(=吉田千恵)が面白い。現実にはあり得ない話だが、この夫婦以外にはコミュニケーションが成り立たないという設定にリアリティがある。深読みすれば、この猫は、この夫婦の潜在意識の象徴なのかもしれないと思われる。
難点はラスト近く、縛られた夫・隆一を、この猫・アルフォンスが紐を噛み切って助け出すという場面。大型犬ならともかく猫のやれる仕事じゃないからここで一気にこの猫の存在感が嘘っぽくなってしまったのが惜しまれた。
さて話そのものはエンターテインメントとしてうまく作られているのだが、役者の表現力が弱い。棒立ちで正面切って平板な台詞をまるで暗記でもしているかのように言う。役者によって多少の差はあるが、全体にその印象が強く、なかなか劇として成り立ち難いのだ。
築80年以上の煉瓦造りの旧い建物を、素人たちがリフォームしてこういう小劇場を造ってしまった情熱と行動力には脱帽する。