演 目
映画/タブロイド
観劇日時/06.3.25
04年制作 メキシコ・エクアドル
配給/東北新社
監督・脚本/セバスチャン・コルデロ
プロデューサー/アルフォンソ・キュアロン
劇場/シアターキノ

緊迫しないサイコサスペンス

 寒村で子ども達の大量殺人事件が続発する。残忍な犯人は不明のまま逃亡中で、「モンスター」と恐れられる。
善良な聖書の訪問販売人・ベニシオ(=ダミアン・アルカザール)は過失の交通事故で子供をひき殺したと誤解され、逮捕留置される。
「タブロイド」TVのレポーター・マノロ(=ジョン・レグイザモ)はベニシオに、「モンスターの情報を提供する代わりにマノロの影響力をもってこの危険な留置場から釈放されるように協力してほしい」と持ちかけられる。
ここからマノロとベニシオの丁々発止の心理バトルが始まる。マノロはあらゆる状況から、ベニシオが「モンスター」その者であるという疑いを持ち、何とか自白させたい。
ベニシオは、行きずりに接触しただけだという「モンスター」の情報を小出しにしながら互いの駆け引きを詰めていく。
ひき殺された子供の両親、ベニシオの新婚の妻とその子、リポーター・クルーの女性プロデューサー(=レオノール・ワトリング)や局のプロデューサーなどとの関係。警察署との駆け引きなどが絡む。
だがこの経過はそれほどスリリングではない。それはトップシーンから、ベニシオが「モンスター」であるという印象が強いのと、度々出てくる状況証拠がベニシオが「モンスター」であるということを示しているからだ。だからこそマノロも引き込まれていくわけだ。
ラストで多分ベニシオが「モンスター」であろうという間接的なシーンが出てもあまり驚かない。ただマノロは、ビニシオのトップシーンでの「モンスター」を思わせる行動を知らないから、マノロの駆け引きも当然だが、観客はこの二人の鬩ぎ合いに強烈なインパクトは感じられない。観客はマノロかベニシオか、どちらかの視点に立って相手を疑い、駆け引きに加担したかったのだ。初めからネタが割れている経過をなぞっても面白くないのだ。