演 目
農業少女
観劇日時/06.3.25
劇団名/演劇集団 空の魚
公演回数/第24回公演
脚本/野田秀樹
演出/鈴木悠平 
スタッフ/阿部友美・佐藤綾子・袴田由香里・大玉ゆりえ
     藤本早苗・濱田忍・大倉雄一・田村舞子・ほか
劇場/BLOCH

社会派の面目躍如

 詐欺師まがいの男・都罪(=木村直美)が、斜陽のAV業から一転してボランティア事業へ転進する顛末が一種の文明批評になっている一方、その男に煽られる形でその男について行く少女・百子(=木村水葉)は、思慮浅い大衆の状況を象徴しているわけだ。
いまや農業も大地から離れてインターネットを使って空を飛ぶ産業だなどという虚言も現代的だ。この男の名前が都罪というのも、農業と東京の発音が似たような響きなのにまったく逆だということを表わした駄洒落と思えるが、都罪という姓には現実性が薄い感じがする。
少女の保護者を自認する実は単なるスケベ男の薬学博士山本(=鈴木悠平)は、百子の男関係を疑い都罪を追い掛け回すのは男女の典型を示しながら、都罪を追い掛け回す百子との関係の二重写しになっているのも面白い構成だ。
ラストで田舎へ戻った少女が、稲を育てるという大事なシーンを、レールに見立てた白いラインに沿って象徴的に作られた稲の小道具を整然と並べていくという演出に、視覚的効果による説得力がある。
百子が農業高校で田植えをする場面、携帯電話を苗に見立てて並べていくのと好対照をなす。
山本のオーバーアクションの暑苦しさと、都罪の単調な演技が気になる。さらに女優がこの男を演じることの必然性が感じられず、違和感が大きい。