演 目
繋がっている
観劇日時/06.3.25
劇団名/演劇公社ライトマン
公演回数/第2回公演
作・演出/じゅうどうげんき
舞台装置・照明/五十嵐圭輔
衣装/武田のぞみ
宣伝美術・音響/フレンチ
劇中歌作曲/げやひろし
小道具/佐藤健一
HP管理/GJ
制作/安藤啓佑
劇場/レッドベリースタジオ

洒落た表現法

 引き篭もってTVゲームをするだけの息子(=重堂元樹)。家族でキャンプを夢見る駄洒落好きサラリーマンの父(=佐藤健一)。夫とは同じ屋根の下にいながらケイタイでしか話せない母(=木幡有里)。
母の親戚の女の子(=武田のぞみ)が、家事見習兼家政婦として住み込む。母はパート勤めと称してパチンコにのめり込み、挙句には消費者金融にはまり込む。
天衣無縫のお手伝いさんは、遠慮会釈なく息子の部屋へ入り込み、ゲームをやったり、貧乏でレパートリィを広げられない息子のために自分のゲームを持ってきたり、しまいには自分のパソコンまで持ち込んだりする。最初、敬遠していた息子も、徐々に心を開いていく。
父は罠にはめられて会社を解雇され、失意の中で偶然入った初めてのパチンコで大当たりし、キャンプの道具を揃え、家族から拒否されて一人でキャンプへと出かける。
キャンプで出会った山男と意気投合し、その男と一緒に起業するつもりで男を連れて帰宅すると、母は得体の知れない女の子と同居しており、ネット詐欺の被害を救ってくれたお手伝いさんへのお礼で息子が作った鍋料理が6人前、出来上がっていた。皆で食べながら、父は再出発を誓い、息子はとりあえず働きに出ることになる。
家族崩壊と再生の物語だが、話自体はありきたりで特別に新しいものではないし、母の再生とこの連れてきた奇妙な女の子との位置が判らないのが難点。
面白かったのは、洒落た表現法。あの超狭い6b×6bくらいの舞台の真ん中に、ちょうど2畳分の台を作って畳が2枚、そこが息子の部屋で、TVゲームのモニターを初め、いかにも引き篭りの男の部屋らしくゴタゴタと飾り込んであるのがそれらしい雰囲気。ここまでは取り立てて新味もない。
下手奥にキャスター付の椅子が一脚、ここが父の部屋。下手手前に電話台があって、ここが多分リビング。上手手前に化粧台、ここが母の部屋。上手奥にはドアがあってここからさまざまな小道具類を出して場面を造る。
たとえばパチンコ屋のシーンは、このドアから小さなスツールとパチンコのダイアルを舞台端に三組並べて、あとは音響効果で雰囲気を出す。
妖精(=エビナヒロキ)が出て息子の心理を代弁する演出も洒落ている。そのシーンでは他の人たちも出て、奇妙なダンスを踊る。これも息子の心理の代弁だろうか。ただこの男妖精が、意味ありげなコスチュームに着替えて常に踊っているのは煩わしい感じだ。
ラストの6人の食事風景が、まったく盛り上がらずむしろ皆な遠慮しいしいボソボソと、やる気あるのかないのか、という雰囲気が逆にリアリティがあるというのか、イヤ将来の危惧を示唆しているともいえる。そう簡単に再生なんて出きっこないよ、とでもいうか……
ストーリィに新味はないが、舞台に魅せられた演出の才気が充分に感じられる舞台であった。
男のコロス(=げやひろし)、女のコロス(=石田茉依)