演 目
映画/イヴの総て
観劇日時/06.3.20
50年アメリカ/DVD

あらゆる世界へ通じる普遍性

 ショービジネスの世界で成り上がって行く若い女・イヴ(=アンバグスター)のサクセスストーリィ。純情を装うその裏で、あくどい手練手管を使って階段を登っていく。
これ下手をすると演劇や映画という表現芸術を冒涜しているように思える。特にバックステージの話しか描かれず、肝心の舞台成果がまったく描かれていないために、純粋に演劇や映画に身命を賭けている人からみれば冗談じゃないという反撥を受けそうだ。だがそういう人たちだって多かれ少なかれそういう汚れた部分だってきっとあるに違いない。
だから全体のトーンはそういう人間不信の性悪説に基づいた絶望的な観点から世界を見ている。一種の諦観からそれも人間だと裏返しにしたような気がする。
それは裏切られるマーゴ(=ベティ・デーヴイス)という大スター女優が余りにも同情されないようなキャラクターとして描かれているせいもある。裏切られても仕方ないだろう、という思いを否定してくれないのだ。やっぱりな、という感じを与えてしまっている。ラストシーン、成功したイヴの部屋へ若い女が侵入している。彼女もショービジネスのヒロイン・イヴに憧れている。彼女がイヴの衣装を羽織って、巨大な三面鏡に映る我が姿を恍惚と見詰めると、三面鏡のその姿が万華鏡のように広がっていく。イヴの再生であろう、この場面が美しく哀しい。