演 目
劇的なるもの〜春の宴〜
観劇日時/06.3.19
劇団名/実験演劇集団 風蝕異人街
構成・監修/こしばきこう 
出演/三木美智代・ニシムラヨシミ・田中亜佐子・布上道代・渡部倫子
劇場/アトリエ阿呆船

密室に閉じ込めた日常

 『奏』・『たいせつなもの』・『OLシリーズ第一部「待つ」』・『第二部「獏〜ばく〜」』・『気になること……よく思い出す……こと』とそれぞれ題された5編の短編集。第二部がソポクレス原作の肉体詩劇『エレクトラ』という構成。
間口6b奥行き4b高さ2b半くらいの、本当に狭い小さな地下室の一部屋。客席はおそらくその半分くらい、つまり間口は6b奥行きは2bそこに8人×4列の30人くらいのキャパ。客席下手奥には照明と音響のオペレーター・スペースを造っている。受付は地下へと降りる階段の途中のただでさえ狭いところに陣取っているわけだ。
この究極に凝縮された空間は、たっぷりとした黒幕で囲われて異次元の日常という矛盾した幻想が浮かび上がる。
1時間半弱の時間の中で6編もの物語が演じられたので、個々の印象が薄くなったのが残念だが、今回は外部からのモダンダンス表現者を迎えて、物語性がいつもより際立ち日常性が強いのが印象的だ。
これまでの風蝕異人街の表現が自己満足的な感じが強かったのに対して、今日の舞台はこの集団のポリシーである「身体詩、物語る肉体」というイメージが具体化したという印象が大きい。特に『待つ』にそれが顕著だ。
問題はその物語が何を目指しているのかが判り難いのだが、それを目指してはいないのだろうか?
「コンテンポラリィ・ダンスを物語化した表現形態」というこしば氏の、当日パンフに述べられたことの具体化として今後に大きな期待を持たせる成果があった。