演 目
その手の物語
観劇日時/06.3.19
劇団名/劇団回帰線ジュニアシアター
公演回数/やまびこ座プロデユース公演
作・演出/西脇秀之
舞台美術/FUKUDA舞台
照明/鈴木静吾
音響/松村数博
衣装/佐々木青
小道具/中川有子
宣伝美術/hara
舞台監督/上田知
制作/やまびこ座・劇団回帰線
劇場/やまびこ座

少し難しかったのでは?

 砂漠にひとりぽっちのさびしい王様(=柴田智之)が居た。そこへ海を失った海賊のキャプテン(=小林なるみ)以下の5人(=ひらめ・吉江和子、どん・奥俊介、スネーク・京極祐輔、ちび・川瀬佳奈江、さそり・三上敦子)が流れ着く。海も船もない海賊が、砂漠に流れ着くというのも変だが、ともかくそういう話なのだ。そしてそこへ孤独な小学5年生の女の子・くず(=田中佐保子)が迷い込んでくる。
図式的にはとてもはっきりしている。人間関係の中で孤立してしまった男と、人間関係を築けない少女、そして自分たちの位置を見失った現代人たちという構図が浮かび上がる。
少女は、友を求める王様にも要領よく世を渡る盗賊たちにも、ついに心を開けない。
面白いのは、この盗賊たちが何かを決めるためにする決闘が、なぜかジャンケンでありそのジャンケンは何度やっても全員がグウになってしまう。それはお互いに傷付きたくないという現代人の、暗黙の了解の謂いであろうか?
最初そのシーンをみたときその緊迫した決闘がジャンケンになる意外性に噴き出したが、それが全員グウになったときアレと思い、何かある毎にジャンケンをやりそれがいつも全員グウになることに強い衝撃を受けた。
この女の子が成人の女優が演じるのだが、それがいかにも小学5年生のイノセンスなことに感嘆した。以前は子どもの役を大人の俳優が演じることに違和感を覚えることが多かったのだが、最近それがめっきり少なくなり、特筆ものはTPSの『銀河鐵道の夜』でのカンパネルラを演じた永利靖だが、今日のクズ役もそれに負けてはいない。
さて話はその王様と海賊のキャプテンが、実はその少女の両親であり、この物語のすべてはクズという少女の妄想であったらしいというオチになる。そこで少女クズは救われたかどうか、それは観客がどう思うかに委ねられるであろう。
観客の低学年には少し難しかったのでは? 表現の面白さには着いていけても物語の核心にはフイットできたかどうか、僕の周りの小さな子ども達は落ち着かなかったのだった。