演 目
煙が目にしみる
観劇日時/06.3.4
劇団名/劇団リベラルシアター
公演回数/3rd program
脚本/堤康之
脚色・演出/千広峻史
照明/小川歩実
音響/久保田秀和
制作/山岡紘美・永杉早紀
宣伝美術/井上愛美・山崎孝宏
劇場/BLOCH

善人たちのホームドラマ

 火葬場の待合室、窓から満開の桜が見える。今、まさに焼かれている最中である、働き盛りの40代の男が二人、亡霊となって未知の死後の世界について、不安を語り合っている。
でも、どこか滑稽で何か漫才かコントのようでもある。やがて二人のそれぞれのたがいに見知らぬ二つの家族が出て、骨上げを待っている。
亡くなった一人の母親は、家族からは少しボケがかっていると思われている。このおばあさんは元気一杯なのだが、なぜか亡霊たちの姿が見え会話が出来る。それがまた家族たちにとってはボケの証明ともみえるわけだ。
その設定を利用して、この二つの家族の内実が徐々に明らかになっていく。しかしそれは暗い話じゃなく、むしろ家族や回りの人たちの善意が現れていく類の微笑ましく、そして多少の漣の垣間見える平凡で暖かい小市民のホームドラマだ。
人間関係が巧く設定されているし、誤解や行き違いがすんなりと解決されて、死者が生きているときには忙しさや成り行きで行き違ったままになっていた関係が、生死を分けて初めて了解し会えたときの感動……しかし余りにも巧く感動的に終ったこと、そしてだれも悪者が居なかったことの安易さに、いささか単純すぎる悔いの残るのも確かだ。
さて死者の一人が高校野球の監督であったことから、全編を通じて春の高校野球選抜大会がTVを通して話題になっている。ところがこの芝居の舞台を札幌へと移したために、窓外に見える桜が季節外れで何とも奇妙な違和感が邪魔をした。
出演は、
死者1・元高校野球の監督/山崎孝宏
死者2・娘と同じ年頃の若い恋人のいる男/大沼誠
監督の妻/岡田みちよ 長男・放浪の写真家/小石川慶祐
娘・高校生/井上美幸 母親・おばあさん/佐藤真一
死者1の従兄妹/小林由香 その頼りない亭主/須田慶太
死者2の娘/常本奈緒 死者2の若い恋人/小笠原瑞枝
娘の高校生と死者2の娘の通うビデオ屋の店長/大高一郎
葬祭場の係員/千広峻史