演 目
カレイド・テレイド
観劇日時/06.2.25
劇団名/箔紐夢劇場
公演回数/第4回公演
脚本・演出/桐田郁
演出補佐/RITAMA・和田憲幸
劇中劇『あめのむこう』原案/梅原英司
照明/大橋はるな
音響/橋本一生
舞台/濱道俊介
映像/佐々木彰
衣装/矢野あい
振付/平澤朋美
小道具プラン/桐田郁・佐藤健五 
小道具製作/小神野友美・荻田美晴・小石川慶祐・セノヲ・藤本えり
制作/竹内恵美・長岡登美子・守川恵美
劇場/シアターZOO

劇中劇の扱いに疑問あり

 ある小さな劇団が問題作を上演した。初日が開いて二日目の朝、主演女優が自殺する。上演は強行されるが、そのスキャンダルによって伝説の舞台として伝わる。自殺の原因は、作者で演出家の小笠原都貴子(=宮元真名)が、劇団の社長であるプロデュサーの梅木つかさ(=寺元綾乃)との対立で、ゲネプロ直後にラストシーンを書き換えたことに納得がいかず、抗議のために自殺したと巷間に伝わった。
10年後、再演されることになり、初演当時小学生だった高梨悠(=小泉悠太)が高校生の時このビデオを観て憧れ、オーデションに合格し、主演男優を演じることになる。
しかし、かの女優は死んではいなかったらしい。社長の意を受けたある男優(=長代拓渡)が彼女を監禁・陵辱し、TVドラマの早朝撮影にかこつけて、彼女の飛び降りシーンを撮影しその映像を報道にリークしただけだったのだ。
ただ、ここで彼女の自殺シーンの隠し撮りには成功したが、本人の身柄は監禁されたままという不自然は残るが、推理ドラマではないのだから、今それは問題にはしないでおこう。
このバックステージの確執のドロドロさと、その隙間に這い上がってくる純朴な青年の物語は確かに見応えがある。
しかし、この現実のストーリィと交互に演じられる、その問題の劇中劇が、観念的な寓話劇であるのが物足りない。
その話とは、隔離されて、無数の監視カメラで包囲された架空の街で、反乱を起こした少数の人たちの物語なのだが、残念ながら余りにも現実離れしている。逆に完全にお伽噺ならばそれなりに納得できるのだが、リアルな設定にしたために話が浮き上がってしまった。
さて最大の問題は、この書き換えられた劇中劇のラストシーンのオリジナルとの相違だ。
この芝居はすべて現実の小劇団の話と劇中劇の進行とが交互に物語られるのと、時間が時系列通りに描かれないのでとても判り難いのと、現実の劇団の人たちと劇中劇の登場人物、それも初演と再演との配役の違いなど入れ替えが複雑で難解なのも苦しい。
だが現実の劇団の話の迫真感によって、僕の期待はこの劇中劇の差異の解明に集中していく。しかし残念ながら謎はなぞのままに終わった。
劇団の女優の死を巡る確執と、10年後の再演に賭けるそれぞれの人たちの思惑に絞った物語の方が、ずっと締まった舞台になったのではなかろうか? 思わせぶりな劇中劇に無理に引きずられて、話が複雑に分裂されたような気がする。
興味を先へ先へと繋げていくテクニックは充分に堪能できたけれども、劇中劇の単純さと現実との噛み合いに不満を残した。
その他の出演者
伊藤千晴・小野由香利・佐藤健五・高石コウヘイ
柳田誠一郎・横嶋安有美・山下カーリー