演 目
星の時間
観劇日時/06.1.30
劇団名/劇工舎ルート
公演回数/3ヶ月連続公演その1
作/別役実
演出/伊藤裕幸
舞台美術/田村明美
舞台監督/飯田慎治
照明/伊藤裕幸
音響プラン/山田健之
音響操作/高田光江
制作/加藤亜紀
宣伝美術/ナシノツブテ
劇場/シアターコア

永遠に待つ女の物語

 冴えない中年男(=高田学)が、失踪したペットの老猫を探しに枯葉散り敷く夜の森へ迷い込む。そこには古びた丸テーブルが裸電球にわびしく照らされており、大きなワゴン車を押した女(=田村明美)がやって来て、テーブルにクロスを広げ花を飾り食器を並べてレストランを開店する。
男は女との噛み合わない会話の末、まったく自分の意思を無視された格好でこのレストランの客となる。
しかし老猫を相手に一人暮らしの男は失業中であり、このレストランの支払いをすると明日の食事にも困る。
女はそんなことはお構いなしに次々と料理を出すが、これがどうにもインチキ臭い。それを何とか口実を構えて強引に男を納得させる。情けないくらいに男は女の手練手管に乗せられていく。
女は誰かを待っているらしい。男は待ち人のダミーなのか? 待ち人は足音であり風の音でもある。今夜も待ち人の現れないことを知った女は、取り上げた男の財布を返す。そこでも気弱な男は、女が暗に要求する金額には到底足りないことを謝りながらも、幾分かの理不尽な支払いを申し出るが女は「金の問題じゃない」と豪語して受け取らない。
ワゴンを押して去る女を、茫然と見送る男。永遠に続く星の時間を待っている女の一瞬……
森の装置が素晴らしい。深い闇の雰囲気が充分に出ている。天井からのドロップ(吊り下げた森の木々の形)が、少し低すぎやしないか? というかその部分だけ抽象的になっていてバランスを崩しているように感じられた。
田村明美は考えすぎたのか平板でメリハリの弱い、平凡な存在になってしまったようだ。高田学は、自意識の薄い中年男の造形に成功したといえるだろう。
前回のとき、女が強過ぎて、その極端な力関係は現代の象徴か? と書いたが今日の舞台は逆に女が弱いのだが、手練手管でもない中途半端な感じがした。