演 目
りんご(再演)
観劇日時/05.3.30
劇団名/Theater・ラグ・203
公演回数/Wednesday Theater Vol.6
作・演出/村松幹男
音楽/今井大蛇丸
照明オペレーター/瀬戸睦代
音響オペレーター/坂井秋絵
Special Thanks/手品師・野村修一
劇場/ラグリグラ劇場


ますます深まる面白さ

 この芝居は何度観たのか分からなくなったほど何度も観ているが、今日の舞台は千秋楽(最終上演日)にふさわしいメリハリのよく効いた舞台であり新鮮な感じがした。
男(山岸英寿=演・村松幹男)の、オーバーアクションすれすれに演じられる感情表現の振幅が、過剰と思えるほどだが、それが不自然さを感じさせないのが良い。
以前は、この男・山岸が余り強く感情をストレートに出すと男の思いの底が割れるような気がして、この男の不条理をはっきりさせない方が芝居として面白いのではないかと思っていたのだが、こうして観るとそういう危惧はなく、むしろ明快であり演出の力技に納得して、我が不明を恥じる次第だ。
女(演・ゆみこ)もそれに対応して眼一杯でキレの良い力演が、女の非日常を感じさせて面白い存在になっていた。この女の存在も、一人の女が三人の違う女性を演じて、それが男にも観客にも、同じ女性なのに何故違う人なのか? という違和感を持たせるのが眼目だが、今日の舞台は男のリアクションの巧さもあって、それが良く感じられる。
たっぷり演じられながらも緊迫した1時間20分は、おそらく今までの上演の中では一番長いと思われるが、一つ一つの台詞まで覚えてしまうほど親しんだ芝居なのに、全く長いとは感じられず、面白い芝居によくある、もう終わったのかという感じだ。
最後に近く、さきほど八つ当たりした妻に謝る電話をするとき、逆光に山岸の髪が白く見え、それが白髪となって、この男の哀切と優しさがじっくりと染み入るようなシーン……