演 目
未完成の物語
観劇日時/05.3.20
劇団名/箔紐夢劇場
公演回数/第2回公演
脚本・演出/桐田郁
演出補佐/梅原英司
照明/相馬寛之
音響/下屋義仁/衣裳=中原奈緒美
小道具=仲代廉
舞台/宮元真名
制作/富樫亜美
宣伝美術/小神野友美
楽曲提供/柳田誠一郎
スタッフ/斎藤由希子・野田康介・能村貴志・鈴木二郎・松田佳奈・他
劇場/ことにパトス


ナルシズム的表現

 サン・テクジュベリの愛と人生の物語。テクジュベリは空への抗しがたい誘惑と、愛する恋人であり将来の夫人である女性への裏切りの行為との日々である。それは
男のロマンと背徳と、女の期待との相克の記録。
問題は、このテクジュベリの業ともいうべき空へのロマンが、この舞台では具体的には表現されておらず、観念的であること、同じく恋人のテクジュベリに対する愛と反発がやはり具体的に表現されておらず、言葉だけの観念でしか表現されていないということであろう。
ロマンの業と愛の不実との錯誤が、必ずしも的確に表現されてはいないが、それは脚本が思い込みの強いパターンの繰り返しになっている上に、全員あまりにも思い込みの激しい重い演技になっているから退屈する。
ラストシーン、夫人が死の直前のテクジュベリの胸に飛び込むのは唐突の感じがする。夫人はそう簡単には飛び込めなかったのではないのか? その方が未完成の思いが残る。これでは完成してしまっている。総体にこのような一直線さが作品を単純にしている。
最後のシーンで、テクジュベリは思いを込めた紙飛行機を客席に飛ばすのだが、10年ほど前に観た、「かわせみ通信舎」の『地球へのピクニック』という、やはりサン・テクジュベリを扱った芝居で、ある街に不時着したテクジュベリと交流した未亡人が明日へと歩き出すために、過去の日記の1ページを切り破いて紙飛行機を作り客席へ向かって飛ばすというシーンがあったのを思い出した…