演 目
春の光
観劇日時/05.2.19
劇団名/弘前劇場
公演回数/05札幌公演
作・演出/長谷川孝治
舞台監督/野村眞仁
照明/中村昭一郎
舞台美術/三浦孝治
装置/鈴木徳人
音響操作/工藤佐希子
制作/佐藤誠
制作補/斉藤蘭・工藤由佳子
劇場/シアターZOO


何事も起こらない群像劇

 結婚式が行われている神社の一室、祝賀会実行委員会の控え室である。平田オリザが最も得意とする、その場の本来の目的とはちょっと違った場所へ出入りする人たちの描写と似ており、物語を通しての劇的な変化というものがないという点も似ている。
淡々と人々が登場し淡々と時間が経過する。そういう作劇術はよく似ているが、各人の表面には見えない悩みとか苦しみとかがはっきりと浮き上がってこないところ、
特に中心的な人物と思われる、仲人であり教育委員会の主事・野中健太郎(=福士賢治)が癌に侵されているという設定、しかも冒頭シーンの妻・節子(=濱野有希)とのしっとりと味わい深い場面が、不鮮明で思わせぶりな描写など意味不明になりかねないことが気になる。
原因がわからなくても、人物たちの不安感や苦しみや悩みが表現されていれば芸術表現としてはそれでいいといえるかもしれないが、もっと具体的な示唆があってもよいと思われる。それが不充分だと結局分からないということになりかねない。観る人におもねるべきではないとは言ってもその兼ね合い、半歩先を行くのか3歩先を行くのか難しいところではあろうが……
印象強かったのは様々なキャラクターの個性の描き分け方がくっきりと際立っていたことだ。これは見事であった。
途中の暗転で、終わったのかと思うほど物語の展開もなく、特に新しい試みがあるわけでもなく、刺激的な表現があるわけでもないけれども、しっとりと生き、しっかりと生活する市井の人々の実態が静かな共感をもって語りかけてくる一時間半であった。