演 目
りんご(再演)
観劇日時/05.2.11
劇団名/Theater・ラグ・203
公演回数/Wednesday Theater Vol.6
作・演出/村松幹男
音楽/今井大蛇丸
照明オペレーター/瀬戸睦代
音響オペレーター/坂井秋絵
Special Thanks/手品師・野村修一
劇場/ラグリグラ劇場


女優よ奮い立て、男優よこの役に挑戦せよ

 久しぶりに『りんご』を観た。新鮮だった。芝居の面白さを堪能した。次々と挑戦する女優陣をものともせず、村松幹男の存在躍如たる舞台だ。ほとんど一人芝居のような印象で、微細な演技のリアリティはますます深まってきたようだった。
それに対して女役の田中玲枝は、端正な演技が逆効果となり胸を借りているという印象が強い。……ところでこの芝居の魅力ってなんだろう?
金繰りに行き詰まった中小企業の営業マン山岸氏は、携帯電話を駆使して得意先や仕入先、銀行などに何とかこの難関を助けてくれるように懇願する。
しかし状況はそうは甘くはない。絶体絶命の山岸氏の白昼夢に現れる女たち。彼女たちは山岸氏の味方なのか敵なのか? 切羽詰った山岸氏のとった行動とは?
得意先の破綻で苦境に陥った営業マンの話になっているが、この山岸氏の境遇は単に一営業マンの話を超えて、誰にも何時でも訪れる可能性のある断崖絶壁の場なのだ。そこにリアリティがあって人事ではない怖さが迫って来るのであろうか?
これまでに観た『りんご』では、3回登場する一人で演じる3人の別の女が、同じようなキャラに見えたのだが、今回は衣裳もはっきりと分け、同じ人物であるのに違う人のように印象付けられるところに、悪夢の怖さがはっきりと出た。ただ暴力シーンにやや切れ味の弱さを感じたのはこちらが見慣れたせいなのか?
ラストでニヤリと不敵に笑わない山岸氏はおそらく今日が初めてだろうが、たぶん1時間10分以上の上演時間がちっとも長くは感じられず、よく知っている話なのに、もう終わったのかという感じであった。