演 目
映画/鉄道員
イタリア57年度作品
観劇日時/05.2.5
提供・配給/アートホール・シネマクラブ
監督/ピエトロ・ジェルミ
音楽/カルロ・ルスティケリ
劇場/アートホール東洲館


新しい世界への期待

 力強くて格好よく頼りになるけれども、頑固で物分りの悪い典型的な古い父親(=ピエトロ・ジェルミ)。それは50年代60年代ころのイタリアでも日本でも同じようなものだ。いや現在でもそれは願望としてはそう違わないのかもしれない。
そういう父親に反発して抵抗する大人になった娘や息子、ひたすら英雄として憧れの対象とする末の息子(=エドアルド・ネヴォラ)。若くて美しく貞淑で従順な母親(=ルイーズ・デラ・ノーチェ)。懐かしい労働者の飲み友達の仲間たち、官僚的な労働組合の幹部たち。
こういう人間たちの輪の中で描かれるエピソードの積み重ね。父親中心の一つの秩序が崩れて、多分新しい世界が出来上がっていくであろうことを、父の臨終に集まったクリスマスを祝う大勢の人たちと、やっと何とか折り合いをつけて帰ってくる子どもたちによって予感される。
この、今やすでに過去のものとなった古い秩序の懐かしさ、それを乗り越えていく新しい力への清新な憧れも、遠い昔の話なのであろうか……懐かしさや憧れもすでに無用の長物なのであろうか……と自棄に感傷的になってしまって……
この映画は、こうやって小さな世界は新しい世界を創っていくことが期待されるのだが、さて翻って今の世の中、どういう新しい世界が期待されているのであろうか……?