演 目
冬のバイエル
観劇日時/04.12.25
劇団名/TPS
公演回数/第15回公演
作・演出/斎藤歩
劇場/シアターZOO


想像力を喚起する物語

 
この三組の男女の織り成す三つの物語は、哀しさと切なさと微かなユーモアと静かな暖か味をもって、生きることのしみじみとした心情を味あわせる。
 若いピアノ教師のフアザーコンプレックスの切ない想い、兄の野望の具体的な内容の分らなさ。杉山氏の亡き妻への思いと男としてのやるせない感情、娘の東京での仕事の期待や不安。若夫婦のすれ違いの原因……
 それらの具体性は、ほとんど物語の表面には現れてはこない。だがそれは決してこの話を食い足りなくはしていない。むしろさまざまに想像して、彼らの人生や自分の周りの人々の想いまで自分に密着させて同感させたり深みを持たせたりして、後々まで楽しませる要素を持つ物語として鑑賞できるのではないであろうか。観客の想像力を起こさせる物語のそこが面白い。