演 目
オルフェ
観劇日時/04.12.6
劇団名/K企画 北海道新聞社
公演回数/フラメンコダンス
脚本/野火晃
演出・振付/池田瑞臣
照明/(有)内藤オープン
劇場/厚生年金会館


疲れを知らない長嶺ヤス子

 ギリシャ神話のオルフェは「振り返ってはいけない」というタブーを犯したために望みを失った男の話だ。だがこの舞台はいわゆる神話のもつ象徴性とか規範性とかいう部分をまるで感じさせず、ひたすら男女の三角関係の闘争劇になっていた。それがダメだというのではなくそれはそれで面白いのだが、一つだけ引っかかったのはアクターという役の男(有本欽隆)がときどき出てきて説明したり指示したりすることだ。これが変に教訓っぽく、言わずもがなの詠嘆調で鼓舞したり解説してみたりするのが鬱陶しくてわざとらしくて、物語を矮小化しつまらなくしている。
 何と言っても2時間30分休みなしというのは長すぎる。物語が単調なだけに全編、長嶺やす子に対する二人の男(Kevin Gaudin・Antonio Delgado)と、恋敵の手下二人(Brian Brocks・Derric Harris)だけという5人の出ずっぱりというエネルギッシュな踊りにはただただ圧倒される。特にラスト近く、恋人が倒されて仮死状態のとき、敵役の男性舞踏手との多分10分以上もありそうな、まるでプロレスみたいな激しいペアダンスはおよそ肉体の限界を超えているような感じさえする。単調で陰鬱な音楽が印象的であり、特に咽び泣くような唸るような男声のソロが強いインパクトを与えていた。
 れにしても長嶺ヤス子はタフだ。カーテンコールでも踊りまくり、四人の男性パートナーたちを誘って踊り狂い、客席まで降りてきてたくさんの花束を抱え、降りかかる緞帳をかいくぐるようにしていつまでも即興のダンスを止めようとしないのだ、まるで何者かに憑かれた狂気の教祖のように……