演 目
悪の組織の作りかた
観劇日時/04.11.27
劇団名/芝居のべんと箱
公演回数/けいこ場解体記念公演
作/八城悠
演出/舛井正博
音楽/富井昭次
劇場/芝居のべんと箱ケイコ場


足りない面白さ

 『君の肩越しに月を見る』『やがて思い出の歌になっていく』『カンヅメ〜缶切りはどこだ?』などの柔らかな叙情と都会的な軽る味が好きで「べんと箱」に通っているわけだが、なぜかこの不思議な稽古場、何と言うのか日常的でいながら摩訶不思議な非日常性みたいな、例えば家庭で葬式をやっているような、実際少し昔はこのような家庭の座敷でお通夜やお葬式も執り行われていたのだ。そういう場所の魅力に惹かれているのも間違いない。
 ところがときどき『マクベスは増殖する』とか『変身超人α』とか、とんでもないブッ飛んだものをやらかす。おそらく今度の芝居もその線上だろうと想像して楽しみに出かけた。秘密結社「ジョーカー」は世界征服の野望のための資金つくりのためにTVのヒーロードラマの悪役を請け負う。バカバカしい怪獣を考え出してはご都合主義のストーリィで子どもたちの人気を集め、シリーズは続映を重ねる。その中で彼らの得たものはノノ?
 出演は伊藤しょうこ・亀井健(AND)・棚田満・温水元(満店飯店)・平野孝。
 こういうナンスンスで無駄なところにオタクっぽい過剰なエネルギーを注ぐ凝った偏執的な遊び心は大いに芝居の面白さを満喫させてくれる。
 しかし今回の舞台はストレートすぎた。何かひねりとか逆転とかがあるのかと期待したのだが……あるような、ないような何となく消化不良の気味……
 この魅力満点の稽古場がこの公演をもって解体されるということで、イヤ劇団が解散するということではなく、借家である建物が老朽化のために取り壊されるのだが、その記念として87年の劇団結成以来の66演目の記録が紹介されていた。
 僕がこの劇団を観始めたのが、02年8月の『君の肩越しに月を見る』?59以来だからまだ8本だけだけどそのリストをみて驚いた。よく言うと実に幅広い演目が並んでいるが、逆に言えば前衛劇からエンターテインメントやコント集まで無定見のようなレパ選定だ。だが僕にはこの何でもありと飲み込む度量の広さを評価したい。何が出てくるか分らないところに僕は変に惹きつけられるのだ。
 志向の違った作者・演出者・俳優たちが組む面白さも捨てがたい。
 稽古場が移っても劇場が変わっても次に何が出てくるのか大いに期待させて欲しい。それにしてもこの博物館的な変な稽古場がなくなってしまうのはとても惜しくて残念な気がする。