演 目
映画/父、帰る
観劇日時/04.11.18
脚本 /アンドレイ・ズビャギンツェフ
劇場/シアターキノ


神話的って何?

 この映画を何の先入観もなく観たら、おそらく父親の理不尽とも思える強圧的な態度にその弟息子が感じた不快と同じものを感じただろう。ロシアの寒村で暮らす母親と祖母と兄弟二人の少年。そこへ顔も知らない父親が突然帰ってくる。不審がる兄弟を有無をいわせず車でキャンプに連れ出す。暗鬱でモノクロのような荒涼たる山野の風景の中、人影のまったくない湖、急に予定を変更して無人島へ行く。
 父のことも無人島のことも、どうしてその無人島へ行ったのかも一切は分らない。だが、すべてが終わったとき、何かが分り、兄は父の位置に立ち二人は父親の存在の大きさに粛然とする。
この映画は神話的と評されている。神話とは何か? 「世界のあらゆる事物や事象の起源を説明し、象徴的に解明する説話であり、日常のすべての規範となる物語」と理解するならば、この『父、帰る』に象徴される規範とは何なのであろうか? 全編、まったく人影の薄い陰鬱荒涼たる風景と、その中で暮らす幼い兄弟の生活が心に残る。