演 目
弥生三番街ゴールデンキラーズ
観劇日時/04.11.13
劇団名/g-viruss
公演回数/Vol.2
作/武田晋&Dキラーズ
演出/武田晋
照明/上村範康
音響/梶野泰範
劇場/テレコムホール


エンターテインメントの卓抜した面白さ

  ……うーんんん、これを何と言えば良いんだろう? 実は幕が開いてから30分くらいは、あまりにもストーリィが複雑で登場人物も多いので、さっぱり話が見えず退屈してついウトウトとしてしまった。
 実は時間の計算を間違えて、開場30分前に着いてしまったので、どうしょうかなとロビーを覗くとすでに入場を待つ観客が長い列を作っていた。
 ハハア……やっぱりこの劇団は人気があるんだ、確かに前回の「ピンキーキャバレー」は面白かった。それは話の展開が壷にはまっていたのと、演出のあざといともいえる盛り上げ方、そして大勢の出演者たちのスピーディでメリハリの利いた演技力、それはワンシーンしか出ない出演者も見事な存在感を示したことにも示される。
 中盤に入って物語の推移を追うのをやめた。するとこの登場人物たちの心情が自然に心に染入ってきたのだ。こういう感じ方は滅多にあるもんではない。僕の場合は特に理屈で割り切ろうとする傾向が強いのだ。それだけこの舞台の表現力が高いからであろう。
 乱暴にも簡単にまとめて言うと、この人たちは寂しいのだ。親しい人や信頼する人たちに理不尽にも先立たれ、生きることの虚しさに耐えられないのだ。そして苦しみ、狂気になり、挙句には自分の生さえも否定しかねない。僕はこんなもん……こんなもん……と自制しつつも遂に涙が滲むのを抑え切れなかった……なぜヤクザとか売春産業とか、悪徳警官とか非合法の世界を描くのか? そういう世界では裏切りも謀略も殺人すらもリアリティがあると普通の人には感じられるのか? そういう世界を借りて人間の極限状態の心情を表現しようとしているのか?
 ステレオタイプでありながら、物語の構成の巧みさ、それを受けて表現する現場の技術力の高さ、それに魅了されて集まる観客の期待の高さノノおそらくこういう映画はたくさんあるのだろう、という想像はつく。だけどこれが映画だったら、おそらく僕は観ない。僕は60歳をとうに過ぎているから映画は天下御免の金1,000円、それに対してこの芝居の木戸銭は大枚2,500円也である。それでも僕はなぜか芝居を観る……映画より芝居を観る……