演 目
さよなら日曜日
観劇日時/04.11.2
劇団名/TPS
公演回数/第14回公演
作・演出 /北川徹
照明/赤山悟(ほりぞんとあーと)
音響/百瀬俊介(shusa)
劇場/ シアターZOO


思いっきり広げた戦場の心情

 アルバールの「戦場のピクニック」を枠組みとして、というよりは、「戦場のピクニック」に作者のイメージを大きく膨らました、というべきか……
 兵士(岡本朋謙)が一人で警備する国境の戦場に、突然、両親(永利靖・原子千穂子)がピクニックの用意をして、しかもきわめて日常的ないでたちで尋ねてくる。というところは、ほとんど原作そのままである。
 この舞台ではプロローグとエピローグ、そして劇の中間にこの劇の観察者として一人のジャーナリストの男(金子剛)を登場させた。おそらく世界を客観視するという立場を担わせたのだろうが、劇の途中からおそろしくプライベートな話になり、恋人(吉田奈穂子)から愛の不確実さを思い知らされる話となる。アルバールの他の短編戯曲(「祈り」「ゲルニカ」「青い風船」「彩られた青春」など)からの翻案だそうだが本筋と強い違和感がある。
 二組の衛生兵たち(高田則央・木村洋次・林千賀子・柏木美子)は「ゴドーを待ちながら」のバリエーションとも思われるが、放浪する三人(ソロ=林千賀子・なみだ=永利靖・トマル=柏木美子)の、この劇中での存在理由もはっきりせず、本筋との絡みが良くわからない。
 捕虜の兵士(塩田悟司)を友人と誤解する両親。誤解というよりは強引にでも友人と信じたい両親。家族の日常としての、捕虜であるはずの友人を含めたピクニックの食事中の、強烈な爆撃機の爆音は、日常の危うさの象徴。すべてが大きな布に覆い尽くされた終幕、それを写真に記録するジャーナリストノノ
 荒涼たる戦場を小さな劇空間に閉じ込める演劇のマジック、一種の室内劇に転換した演出の冴え、しかしこれはすでに去年、同じ「戦場のピクニック」で滝沢修が成功している。今回はその実績を踏まえて「戦場のピクニック」を室内劇として表現する可能性を確かなものにした。