演 目
東京物語
観劇日時/04.10.2
劇団名/劇団・動物園(北見)
公演回数/道東小劇場演劇祭
作/竹内銃一郎
演出/松本大悟
照明・音響/佐藤菜美
劇場/帯広・メガストーン


逆転した結末の面白さ

 最初は『蜘蛛女のキス』(マヌエル・プイグ原作)とか『ベント(堕ちた饗宴)』(マーティン・シャーマン原作)と同じような、あるいは似たようなシュチューションで、同房に収容されたオカマと革命戦士の異常な状況における愛情関係の物語と思わせる描写が延々と続く。もちろん『蜘蛛女のキス』をモチーフにしているという断り書きはあるけれども……
 全編を貫くのは、オカマのオリーブ(中村聡)が語る、『東京物語』のストーリイだ。これはとても切なく甘く、映画のシーンが髣髴と浮かび上がる。
 大儀のために脱獄しようとする革命戦士・ブレーキ(松本大悟)を、綿々と引きとめ、恨み言を述べるゲイの男・中村聡、その告白の言葉に脱獄をためらうブレーキ。
 印象的だったのはオカマの演技。こういう芝居はともすればいかにもオカマですよという過剰な演技をやりやすいが、それをやると嘘臭くなる。今までそういう役者を何人観たことか……
 この人(中村聡)は、その際どいところでリアリティのある芝居を演じ、もしかして本物? とも思わせる卓抜さであった。
 ラストで、反権力組織の大物が逃亡の手段としてオカマを装い、その尻尾を掴もうとする権力側のスパイが革命戦士を演じて、オカマに化けた大物革命戦士の囚房へ入ってきたという大逆転のストーリィが判る。
 あとで、このラストが劇団・動物園の創作だと知って驚嘆した。竹内戯曲はストーリィに謎めいたところがあって一筋縄ではいかないところがあるが、あとで原作にあたってみるとラストがハッキリし過ぎて竹内戯曲らしくないような気がしたが、潤色を知って、なるほどこういう方法もありなんだと納得したのであった。ただしこれでもなおハッキリと割り切れすぎていて本来の味ではないような気がするけれども……
 ともあれ、丁々発止のスリリングと『東京物語』の静謐のない交ぜになった物語が逆転するラストの処理といい、演技表現といい、高い水準の舞台であった。