演 目
謎の変奏曲
観劇日時/04.6.29
劇団名/旭川ステージワークプロデュース
作/エリック・エマニュエル・シュミット
演出/宮田慶子
照明/中川隆一
音響/高橋巌
劇場/深川市「み・らい」


二重のドンデン返し

  北極に近い陰鬱で小さな島に一人で住む、傲慢で頑迷で人嫌いで観念論者のノーベル賞作家アベル・ズノルコ(杉浦直樹)。そこへ取材に訪れた地方新聞記者のエリック・ラルセン(沢田研二)。
ズノルコは、ある一人の女性と手紙の往復だけで15年に及ぶ恋愛関係を続け、その往復書簡集『未刊の愛 』が刊行されて、大きな賞賛を受けている。だがそれは文字通り未完で終わっている。ラルセンは、「なぜ未完なのか? 相手の女性にはモデルがいるのか?」などと次々に質問を投げかける。
 ズノルコは「神秘的なものが美しいのは、そこに秘密が隠されているからであって、真実が隠されているからではない」と答える。
 だが二人のやり取りの中で、意外な真実が現れてくる。衝撃のズノルコ。さらに押し込むラルセン。そして最後にもっと意外な真実が隠されていた。
 話自体はかなり面白い。頑迷で人嫌いなズノルコと、柔軟でやさしいが大きな秘密をもつラルセンとの二人の関係は、個人対個人の関係を超えて、さまざまな集団や社会や大きくは国家間の関係にまで思いは広がっていく。
 だが舞台は意外につまらない。杉浦直樹が単調なのだ。長台詞になると退屈する。澤田研二は一見、柔軟な対応で喜劇的な表現を見せるが、それは一種の客受けを意識した軽薄さとも見える危うさを感じる。
 全体に長すぎるから余計な夾雑物が邪魔をする感じがする。もっと短い方が緊迫感が強いと思う。
 このような密室の心理劇を、700人規模の中劇場で上演するのは賛成できない。室内楽をオペラハウスで演奏するようなものだ。
 台詞を確認するために、以前に読んだ戯曲の台本を引っ張り出してみた。するとその台本の最後に僕が書いたメモ書きがあった。以下それを書き写す。

「形而上的、哲学的、禅問答的会話が延々と続く。多分実際の舞台ではよく判らない部分が多く、退屈するであろう。それを実力のある演技派の役者が演じることでどれだけ納得してもらえるのかが、おそらく勝負であろう。単調で面白くないという観客と、これじゃ芝居を観なくとも戯曲を読んだ方がましだという二組に分かれるだろう。話の展開はスリリングだけれども、それは本(戯曲)の面白さでしかない」本人は忘れていたが、こう書いてあった。そしてその通りであった。
 感心したのは、このような動きの少ない、登場人物もたった二人という地味な芝居を、80 %は中高年の女性という観客が、静まりかえって、笑うところではきちんと笑い、最後まで観通したことであった。澤田研二と杉浦直樹の出演ということがあったかも知れないが、失礼ながら観客の質の高さが意外であった。ただし後で聞いたところによると、結構あちこちで、私語や飲食や居眠りがあったようではあるけれども・・・